治験使用薬における電子ラベルのアドバンテージとは
新しい医薬品、医療機器、ワクチン、その他の医療用製品(IMP)を開発するとき、各国の要件で定められている特定の情報をパッケージのラベルに表示しなければなりません。その製品が承認され、患者さんに使用されるようになるまでに規制当局と使用者が知っておくべき重要な情報が該当し、取扱に関する説明(IFU)、使用期限、保管要件などが含まれます。
電子ラベルは要件に?
2022年1月にEU臨床試験規則(EU CTR)が施行されたとき、IMPのラベルに課される要件にいくつかの重要な変更が加えられました。特に重要な変更は、過去記事でも触れたとおり、二次包装だけでなく、製品の一次包装にIMPの使用期限を表示することでした(ただし、これは2022年11月15日の改正により廃止されています)。
世界中でデジタル化が促進されるなかで、印刷されたラベルではなく電子ラベル(eラベル)を使用するという要件については大きな議題が喚起されました。最終的に、IMPのラベルは引き続き印刷が必要であると判断され、電子ラベルは付加情報として追加できることになりました。
電子ラベルのアドバンテージ
電子ラベルは必須ではないかもしれませんが、関心は高まっています。たとえば、世界中でQRコードが急速に普及していること、患者さんの電子日誌(eDiary)やウェアラブルテクノロジーといった分野でテクノロジーの導入とイノベーションが進んでいることなどを背景に、業界では、IMPに電子ラベルを追加するアドバンテージについて検討が続けられています。
患者さんの安全性とアクセシビリティが向上
電子的なフォーマットで情報が提供されれば、フォントを見やすいサイズに変えたり、検索機能を使って、大量の情報から目的の情報を見つけたりできるようになります。また、必要に応じて、言語を簡単に切り替えることもできます。さらに、対話型ディスプレイを組み込んで患者さん向けの教育動画、服薬リマインダーといった情報を電子ラベルに表示させたり、患者日誌と接続してIMPの服用状況を追跡するといった、さらに高いレベルでの活用も不可能ではありません。このような要素を活用して、IMPに関する情報を読んだり、参照したり、理解できるようにすれば、患者さんにとってのリスクの低下や安全性の向上につながります。また、患者さん、治験依頼者、施設スタッフの間のコミュニケーションを円滑化する効果もあるでしょう。
コンプライアンスの強化
情報を見つけやすくすることには、患者さんにとっての安全性と使い勝手の向上にとどまらない意味があります。電子ラベルが規制上の観点から要件として指定されることになれば、使用期限の最新情報の取り違いミスを減らす、新しいDX戦略と適合させる、患者さんがIMPの最新情報を常に確認できるようにする、といったことが可能になるでしょう。
プロセスの効率化と最適化
デジタル化されたツールやコンテンツの多くに共通しますが、電子ラベルのアップデートは従来の印刷ラベルと比べ、簡単で、迅速で、費用対効果に優れています。たとえば、EUで臨床試験を実施しており、すでに登録された施設に対して、IMPの内包に表示された内容をアップデートしなければならない場合、電子ラベルであれば、現物を再送してスケジュールに遅れを生じさせることなく(追加コストをかけず)、オンラインで素早くアップデートできます。これにより、治験依頼者の業務プロセスが改善され、治験薬の市場投入が早まり、患者さんはパーソナライズされた治療をより早く受けることが可能になります。もちろん、印刷ラベルが主流となっている現状では、こうしたアドバンテージはまだ理論的なものにとどまります。
廃棄物の削減
電子ラベルを活用すれば、治験依頼者はより良いプーリング戦略(同一の治験薬を使用する臨床試験で製品を共用する戦略)をとることができます。これによって、廃棄物を削減したり、在庫切れリスクを管理したり、全体的なコストを削減したりすることができるでしょう。
将来を見据えて
テクノロジーの進歩は、臨床開発や研究開発のあらゆる領域で進んでいます。今後、業界で電子ラベルが要件となる可能性に備えて、治験依頼者は準備を進めておく必要があるでしょう。
準備作業の一例としては、臨床試験(国際共同試験)で使用される、多言語で作成される冊子型の添付文書のQRコードを作成することが挙げられます。このような冊子は、治験依頼者にとっては作成や更新に手間がかかり、患者さんには扱いにくいものになっています。情報がぎっしりと詰め込まれているため、患者さんが自分と関連のある情報を探し出すのは容易ではありません。このような冊子をデジタルフォーマットに移行すれば、治験依頼者は治験薬の使用期限に関する情報を更新する際に生じる手違いを減らしたり、全体的な製品開発期間を短縮することもできるでしょう。また、患者さんは探している情報を簡単に見つけたり、解説動画やインフォグラフィックといった他の資料にも指先で操作するだけで簡単にアクセスできるようになります。このようにコンパクトで有益な電子ラベルの展開について概念実証ができるような形で運用すれば、規制当局の承認が得られる可能性も高まるでしょう。
トランスパーフェクトのテクノロジーを、患者さん向け添付冊子やラベルの翻訳や作成に使用することには大きなアドバンテージがあります。もし、EU CTRに従って電子ラベルを導入するための指針やステップについて、さらなる詳細をお求めであれば、ぜひお問い合わせください。
トランスパーフェクトについて
弊社は翻訳サービス・ AI自動翻訳ツールを提供する翻訳会社大手であり、NYを本社に、東京でも支店を置いています。すでに海外展開している企業もこれから海外進出する中小企業も支援します。日本語・英語はもちろん170言語以上の翻訳に対応しています。弊社の翻訳エンジンを搭載した、GlobalLink®テクノロジーは、5,000社以上のグローバル企業で採用され、強力かつシンプルな多言語コンテンツ管理を実現しています。品質と顧客サービスに徹底的にこだわるトランスパーフェクトは、ISO®9001およびISO® 17100 への完全準拠の認証も取得しています。弊社Webサイト(www.transperfect.com/ja/home)をご覧ください。
事業内容:翻訳・通訳/Webサイト・ソフトウェア ローカリゼーション/翻訳管理システム(TMS)/多言語デジタルマーケテイング/eラーニング開発とローカリゼーション/動画の字幕と吹替/機械学習用データのアノテーション