治験使用薬:ラベリング要件の変更とその影響
2014年5月、EU臨床試験規則(EU CTR No. 536/2014)が可決され、従来のEU臨床試験指令(EU Directive No. 2001/20/EC)が改正されました。臨床試験の安全性、効率性、透明性、協力体制を向上させることが目的とされています。2022年1月末にこの規則が発効し、該当する企業は、3年間の移行期間中に新しい要件に対応しなければならなくなりました。
新しい規則の変更点のひとつとして、Annex VI(付属書6)があります。Annex VIでは、治験薬(IMP)のラベリングに関する要件の変更があり、EU加盟国全域でのさらなる規制要件の調和を目指しています(翻訳以外に各国の特異性はありません)。では、こうした変更は何を意味しており、医薬品が包装される直接の容器の外装にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
Annex VIの影響
使用期限を内袋に記載しなければならない
従来、医薬品の使用期限またはリテスト日は、外装パッケージにのみ記載が義務づけられていました。Annex VIでは当初、これを内袋にも同様に記載しなければならないと説明していました。しかし、業界から運用面の影響の大きさを指摘されたため、最終的には2022年11月15日公表(2022年12月5日発効)の委任規則で規定が緩和されました。
補助薬(AMP)の最新定義
従来定義されていなかった補助薬(AMP)が、「被験薬(IMP)ではないものの、臨床試験のなかで使われるもの」として明記されるようになりました。最新の定義では、非承認のAMPについても、ラベリング要件の対象となることが定められました。患者さんに有害事象が発生した場合に、患者さんの安全性とトレーサビリティを高めるためです。
効率化された申請プロセス
EU CTRによって新しいポータルが導入されます。これは、EU加盟国で実施される臨床試験のための申請書類を提出する総合的な窓口(エントリーポイント)となり、申請書類の提出プロセスを効率化することを目指しています。申請書類には、化学製品や医薬品に関するコアとなるパート(パート1)と、同意説明文書、臨床試験実施医療機関や臨床試験責任医師の適格性、実施医療機関との資金面の取り決め、その他の各国情報を扱うパート(パート2)があります。
透明性と平易な言語の要件が拡大
透明性を高め、アクセス性を向上させるため、EU CTRでは、EUポータルとデータベースの利用を促進しながら、臨床試験の手続きや文書における透明性の向上を求めています。また、臨床試験の結果の概要を、試験完了後に、一般の人々が理解しやすい言葉で公表し、臨床試験に参加した国の言語に翻訳することも求めています。
製薬企業にとってのAnnex VIの意味
こうした変更はいずれも臨床試験に影響を及ぼすものですが、Annex VIで取り入れられた最も注目すべき変更は、直接の容器への期限の記載を製薬企業に求めること、そしてそれは実施中の臨床試験、特に盲検試験も対象となる点です。使用期限を記載するという要件については、その後の改正により、幾分かの懸念は解消されましたが、いくつかの観点から、現時点では移行を検討しておくことが重要になっています。
実施中の臨床試験
実施中の臨床試験については、2025年1月31日まで、引き続きEU臨床試験指令(EU CTD)に準拠して実施できます(EU CTDの下でラベリングの変更は不要)。この日付までに、同規則の対象となる試験をEU CTRの管理下に移行させる、または欧州で終了させる必要があります。2022年1月31日以降、実施中の臨床試験への新たな国の追加は、その試験が移行されていれば可能になります(2022年1月31日以降、EU CTDの下で初回申請することはできません)。
新規の臨床試験
EU CTR Annex VIに詳細が記載されている規則は、EU CTRに準拠して直接申請が行われた臨床試験の開始時から適用されます。Annex VIはEU CTRの一部であり、地域の法規より優先されるため、翻訳を除けば、各国の特異性はありません。EU CTDから移行した臨床試験の場合、すでに販売されている治験薬(IMP)については、ラベリングをやり直す必要はない場合があります。
サプライチェーンへの影響
まずは、EU CTRによる実施中または新規の臨床試験やサプライチェーンへの影響を慎重に評価し、治験使用薬のラベリング戦略を明確にすることが重要です。特に、実施中の臨床試験をどう評価するかという点が重要です。販売(承認)状況に応じてIMPのラベリングへの対応が変わるのか、場合によれば、移行日以降に生産を開始するケースにはどのように対処するかなど、移行が必要であるかどうかについて慎重に評価しなければなりません。
おわりに
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